蒸し暑い夏の日。ジャストリブート最後の夏。はじまりは雨だった。
予選で選ばれた精鋭バンド8組が「TEENS ROCK FES 柏」のステージに立った。勝ち抜けば全国大会。舞台は茨城県ひたちなか市。ジャストリブートは最新曲「明日は鬱な月曜日」を披露した。
”ゆ~りんち~”のボーカルソロから始まり観客はジャストリブートの世界に引き込まれた直後、印象的なギターリフとともに3人の楽器が炸裂。Aメロはキーボードとドラムに支えられボーカルの声が乗る。ギターが加わりBメロに突入。サビへと向かっていく。耳に残るマイナー調のサビはこれから始まる憂鬱な月曜日に対して。サビが終わり間奏へ。ここまでは典型的なポップソングの序列に則った形式だ。2番のAメロがはじまる。ここで一味違った手法を用いてくるのが、今年のジャストリブート。”ゆ~りんち~”がシャウトするとボーカルはキーボードの”ミナミン・アルレルト”とドラムの”みのパム”にチェンジ。その後曲は3拍子の間奏へ突入。変幻自在にアレンジされた楽曲にジャストリブートの進化が見られた。静寂の中キーボードの音が聴こえ、歌詞に合わせるようにスネアドラムの音がクレシェンドし、曲はクライマックスのサビへ。サビの後のラストはギターソロ。ギターソロをラストに持ってくる手法はジャストリブートのお家芸である。そして曲は憂鬱を切り裂くように終わった。
TEENS ROCK FESの全国大会への出場は叶わなかったもの、ジャストリブートは最後の夏に向けて良好な滑り出しを見せた。茂原北陵高校軽音楽サークルで最も熱いバンドが、最後の夏に向けボリュームのチャンネルを最大限に回し始めた。
スピンオフ作品 「ジャストリブート結成前夜~2022年春~」
教室の端に配置された私の席。机に突っ伏しながら見た満開の桜がよどんで見える。眠くて退屈な日だった。
「ねぇ、ねぇ」私じゃないと思いその声を無視した。「ねぇ!ねぇ!」語気が強まっている。鬱陶しそうに顔を上げた。「ねぇ、私たち3人でバンド組まない。」。眠そうな顔と驚いた顔がブレンドされていたのだろう。相手は笑っている。でも鼓動が高まっている。根拠はないけど何かが起きる予感がした。
バンド名は”ジャストリブート”と名付けた。さっき見た満開の桜が鮮やかなピンク色に見えたのは、きっと気のせいじゃない。
2022年春。すべては教室の片隅から始まった。